[ 現地報告 ]国名 バングラデシュ人民共和国 チャンドラゴーナ
〜この国で何が実現できるのか?〜 宮川眞一
バングラデシュは後発開発途上国或いは最貧国と呼ばれる国の1つ、人口密度の非常に高い国・洪水やサイクロンの被災地として御存知の方もおられると思います。インドの東隣に位置し1971年の独立前は東パキスタンと呼ばれていました。私は今、首都ダッカに継ぐ第2の都市チッタゴンから車で1時間半ほど北東にあるチャンドラゴーナという町にあるキリスト教病院でJOCS(日本キリスト教海外医療協力会)ワーカーとして働いています。
そもそも20年前、関学神学部在学中に1ヶ月半滞在したことが私とバングラとの出会いでした。卒後医学部を再受験・卒業し救急病院で8年ほど働いた後、念願かなって、医師として、この地に帰って来る事ができた次第です。
私の住むチャンドラゴーナは、チッタゴン丘陵地帯と呼ばれる少数民族が多く住み、政治的にも複雑な地域に隣接しています。従って、ここは、この国の中でも医療過疎が激しい所であり、さらに悪いことに、熱帯病のマラリアの陰湿地帯でもあります。
1年半前に赴任しダッカでベンガル語を習った後、この病院が始めた丘陵地帯も含む地域医療のプロジェクトに参加し、病院での診療にもあたっています。
プロジェクトは現在、4地区の村のヘルスワーカーのトレーニングが終了し、定期的な巡回医療チームの派遣が軌道に乗ってきた所です。とはいえ、文化や習慣の違いに毎日翻弄されているのが現実です。
私が継続治療していたある患者さんは、歩きに2時間、舟を2回乗り継ぎ1時間半、車で1時間半もかかって病院まで来るそうです。しかも雨で川の流れが速いと舟は出ず、野生のゾウに出くわすと危険なため何人かの同行が必要だといいます。しかし、その患者さんも、この数ヶ月顔を見せてくれません。病気であっても貧困であるがために医療施設に移動することも、ままならない人が多いのも村の現実です。環境・貧困・医療は「自立」に向けた歩みの中、教育問題を含み互いにリンクしあっています。
この様な複合的問題の改善は、本来国が担っていくべきものですが、現在のバングラの複雑な政治状況の中では難しいものがありますし、それを待っていることもできません。(現在も非常事態宣言後、国会議員選挙が行えない状況が継続しています。)
砂漠に蒔かれたコップ1杯の水のような活動だと感じることも多いですが、砂漠にもオアシスがあるように現地の人が蒔いたタネが、少しずつでも緑を増やせるものになればと願っています。(関西学院広報誌「関学ジャーナル」No.209 2007年5月25日号所収)
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