[ 現地報告 〜現場の風に吹かれる〜 ] 宮川眞一

イメージ  バングラデシュには日本人会がダッカとチッタゴンにあります。ダッカの会員数は約300名チッタゴンは30名程です。その他の在留邦人の数を合わすと400名近くだそうです。
 先日、首都ダッカにある日本人学校で子供達に話をする機会を与えられました。生徒数は小学校中学校あわせて12名。45分の授業の中で写真を中心に、前半は地域公衆衛生のプロジェクトの話、後半はJOCSの働き、質疑応答を行いました。意外にも小学校1年生から中学2年生まで、それぞれが積極的に質問をし、意見を語ってくれました。高学年の一人の子は「自分も将来ワーカーのような仕事をしたい。」と真剣な目で語りました。また、特別参観の父兄や先生からも質問がありました。
 JOCS会員でもあるI先生のお世話で急に決まり、事前学習もなかったのですが、なぜ、これほど関心を引いたのでしょうか?大きな理由のひとつは、多分彼らもバングラデシュという日本とは違った過酷な現場に生き、日常の中で絶えず間接・直接的に刺激を受け「なぜ、このような現状なのか?」「自分も何かできないか?」と意識的・無意識的に考えているからではないでしょうか。

 さて、大阪女学院短期大学では地域研究という授業の一環として毎年バングラデシュへのスタディーツアーを行っています。同短大と私の勤務するチャンドラゴーナ・キリスト教病院(以下CHC)との関係は、謝恩会止め、その費用を小児科病棟建築に寄付した所から始まります。担当のT先生、J先生他の方々の持続へのご苦労もさることながら、毎年この授業を履修しようと考える学生が多くいることに嬉しさを感じます。
先日約1週間CHCに滞在された8名の学生さんたちの最初の様子は「かわいい!」「信じられへん!」「有り得へん!」という言葉に集約されました。しかし、ハードに組まれた日程の中、スタディーツアーというある意味では保護され、制限のある土台の上から現場を見ているにせよ、日々彼女たちの顔つきや言動が変わっていくのを垣間見ることができました。
 来春、貿易事務職への就職が決まっている学生は「何か始めたいと思う。今は募金や切手集めを会社で始め、もし自分に出来ることが見つかったら再びバングラに戻って来たい。」と素直な感想を書いてくれました。又、国際関係学部への進学が決まっている学生は「現場を見ることで逆に「開発」に関して疑問を感じ、今後の学習の原動力になった」と語っています。1年生のある学生は「人口問題に興味があったが、それは貧困・医療・教育などさまざまな問題とリンクしているということを身にしみて感じた」と言います。
 問題意識はある程度持っていたにせよ、何が彼女達の意識を短期間に、これほど変えていったのか?やはり、それは現場の風に直接触れたことが大きな要因でしょう。
「百聞は一見にしかず」少々ベタな引用ですが、これに尽きるような気がします。私も20年前に始めて訪れたバングラでのショックがワーカーという今の仕事に結びついた一人です。若い時期に受ける刺激は大きく、その人の人生に関わってきます。しかし、年齢を問わず、このような直接的な体験は人生の幅を広げてくれるように思います。
 言葉や絵で知識を聞き、又伝えいくことは重要な事ですし、劇やゲームなどを通した擬似体験も、もちろん重要です。しかし、JOCSに限らず日本でも、スタディーツアーは個人の興味によって選択が可能なほど豊富にある最近、もし余裕を作ることができるなら現場を短期間でも体験することは非常に有意義なことだと考えます。(JOCS会報「みんなで生きる」2007年3・4月号所収)



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